憧れの人が小4女子に手を出している筈の友人と付き合っていた話と罪袋を被っていた僕、それに失われた10代

「街を怪物が闊歩している……クリスマスという怪物が……。」(森見登美彦)『太陽の塔

 今年もこの時期がやってきました。人々が浮足立ち、街がイルミネーションで飾られ、スーパーにはホールケーキの広告が並ぶ……イエス=キリスト生誕を祝う日、冬の恋愛バーゲン、枕元の靴下、ソシャゲに限定キャラが追加される日、つまりはクリスマス(*1)です。まったくの余談ですが、私は幼稚園の頃イエス=キリストの誕生日を1/1だと勘違いしており、同じく正月、それも2000年の特別な日に生まれた自分をキリストの生まれ変わりだと本気で信じ込んでいました。ミッション系幼稚園の宗教教育の賜物です。

 

さて、このブログはクリスマスという良き日に恋愛弱者二十手前男の呪詛を垂れ流してやろうと思い書かれたものですが、本題に入る前にはいかにして私が陰キャになったかということを語らなければなりません。しかしタイトルの内容を楽しみにしている方に待ってもらうことも忍びないので、中学までの過去編は読みたい人だけ読んでください。

 

(中学までの過去編開始)

 

幼稚園の頃はまだ自分もまともな恋愛街道を進んでいて、同級生のドイツ人ハーフっ子や普通に仲良くしていた子の家に遊びに行ったり、何故かプロポーズしたりしていました。「結婚してください」とある女子に言った直後に別の女子にも同じ言葉を言いに行ったことを覚えています、異世界ハーレム物より展開が早そう。ともあれあの頃は、昼飯を食べたらドッチボールをして遊び、竹やぶで走って蜘蛛の巣にぶち当たり女子にとってもらうような、純然たる陽キャでした。

 

間違いの始まりは、小学二年生の時に北陸へ引っ越したことです。北陸のご飯は引っ越し前の某大都会県より美味しく、朝に三杯給食はクラスの缶を空にして夜にまた三杯と、お腹いっぱいになるまで食べ続けていたらぶくぶく太り、小三の身体測定で市から肥満の警告書が来るまでになってしまいました。小二の冬に吉野家牛丼並盛2杯大盛二杯を一度に食べたことを思い出します。この体形は、中二の冬に友人がバレンタインのチョコを貰っているのを目撃し、一念発起してランニングを始めるまで標準に戻らず、そのために以後の学生生活に暗い影を落とすことになります。

 

中二の夏ごろに初恋をしました。周りから肌の白さと体系からベイマックス(*2)といわれるようなデブ成績イキリ陰キャにも笑顔を向けてくれる女子に惚れ、空回りし、リア充女子のコンテンツにされつつも修学旅行で告白して見事にフラれました。

 

兄がラノベを買ってきたり、天理教(*3)の跡継ぎがカリスマ性を放っていたオタク将棋部に入ったり、ニコニコ動画に嵌ったり、友人たちとデュエマ(*4)YouTuberになろうとして「この○○って奴だけ声キモいな。」とコメントに書かれたり、成績だけはよかったりした結果、中三の終わりには「ニコニコ動画系成績イキリクソサブカルオタク」とでもいうようなモンスターになってしまっていました。

クラスの端の方でニヨニヨして西尾維新を読んでいたり、ネットで拾ったネタを話したり、「あ~俺Youtube見てないわ~、もっぱらニコニコ動画www」と公言したり、カゲプロ(*5)のMVを兄に落としてもらってiPodに入れるような奴、それが私でした。(自分よりキモオタがいたのでいじめられることは無かった)(淫夢に手を出さなかったのだけが救い)

 

(過去編終了)

 

さて、高校生になった私は、半中高一貫だったため半分以上のメンツが変わらず、それ故中学から態度が変わるはずもなく相も変わらずオタクをしながら「リア充爆発しろ!」だの「俺はバーチャル活動が充実してるから」だのとのたまって暮らしていました。バーチャル活動は後に更に充実する(*6)ことになります。本当はちょっとだけ高校に入ってから爽やかになろうと思っていたのですが、「しけ」という中一の最初の身体測定の時間に白ける発言をしてしまったことから来たあだ名が外部生にまで広まった時点でキラキラ高校生ライフを諦めました。将棋部でTRPG(*7)とマリオカートをし、黒板にオタク画や風景画(模写)を描き、フタル酸(*8)を黒ニーソ女子高生に擬人化して可愛いねと言い、銀髪ロシア美少女に憧れて県のロシア派遣団に入るもパリピアジア系ロシア人(可愛い)に圧倒され、こっそりシノビリフレ(*9)を買い、数学のテストを暗算縛りで解いたりと、サブカルクソイキリオタクライフを満喫していました。

 

やっと本題に入ります。とりあえず登場人物の説明をしていきましょう。(登場人物の名前は偽名です。)

 

まず、小津という男子がいます。こいつは高校から入学した外部生で、最も私と波長が合い、顔が合えば萌えやラノベの話をし、共に黒板に絵を描き、おそ松さん(*10)で盛り上がり、たまに遊びに行くような黒メガネ信用可能オタクでした。声優、腐、有名萌えアニメなど網羅していて、所謂最近のオタク像が肉体を得たような雰囲気をしていました。彼と歩いているときは、私は臆面もなくリア充死ね!」とか「最近の日本語に聞こえない歌よりはボーカロイド(*11)の方が良くね?」とか言っていたものです。

 

次に、明石さんという女子がいます。彼女はジョジョ(*12)や声優や古い少女漫画が好きなオタクでした。家の方針か、LINE(*13)は使っていませんでした。また頭も良く、私と彼女ともう一人のモブ(天才)と三人で学年一位を争っていたものです。オタサーの姫的な役割もしていて、例えば一年末の修学旅行で台湾に行った際には彼女と男子オタク四人で班を組んでいました。そして現地のアニメイトに行きました。なぜか他の班もいました。

率直に言って、私は彼女を敬愛していました。論理を学び、はきはきと自分の考えを伝え、いつも「高校生活」から浮いて生きているような人でした。この人をロールモデルにしよう、この人についていこうと思わせるカリスマ性がありました。彼女とオタク的な何かでも、テストの点数でも、勉学についてでも話せることは幸せでしたし、彼女にテストで水を空けられた時なんかは「このままでは彼女から俺への興味が薄れてしまう!」と思い必死に勉強したものです。彼女とテストで張り合うことのみが僕の青春でしたし、また志望校への切符も彼女に貰ったようなものだと勝手に思っていました。

 

もう一人、樋口という男子がいます。こいつの特性は重要でないので大分省きますが、簡単に言えばぬらりひょんのような顔をした「「古参(概念)」」オタクです。伝われ

 

 

 

さて、高2の夏、小津がオタク男子LINEグループにあるメールのコピペを投稿しました。その内容は、「あん。。。。私。。。。大好きなご主人様にいじられて興奮しちゃうようなダメなおんなのこなの。。。。。」といった感じのえっち(*14)メールでした。途端小津はグループから全員を退会させ、隠滅を図ろうとしました!だが当然、私たちは瞬時にスクリーンショットを撮っています。再送と共有を繰り返し、小津にこれは何かを吐かせる場を作り上げることに成功しました。小津は「誤爆だよ笑」などと意味不明なことをのたまい始め、さらに吊し上げて相手を聞くと「ネットの掲示板で知り合った小4女子だよ笑笑」などと通報案件なことを言いだしました。この話は小津がやべー奴だったという結論に達し、その後数か月間は語られることなく忘れられることになります。

 

高2の晩秋に文化祭が行われました。私たちの学校は高2が中心となって文化祭を運営するのですが、部活で屋台をやるわけでもなく学年の出し物にも参加しないものとしては暇なもので、結局私は翌日に控えたセンター模試対策に単語帳を開きつつ将棋を指したり中学同期とぶらぶらしてたりしていました。さて、私はサブカルクソオタクらしく罪袋を被って、文化祭マジックを楽しむ者どもに呪いの言葉を吐きつつ文化祭を回っていました。一年生の時、罪袋を被るだけでそこらにいるロリショタどもから「罪だー」「罪人だ」「悪いことしたのー??」と絡まれるのが濁った快感を私にもたらし、それが癖になっていたためです。

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高1の文化祭にて




罪袋を被った私が茶道部前を通りかかると、明石さんが「勉強の相談したい!メアド教えて!」と、しつこくナンパされているのに遭遇しました。明石さんは、彼氏がいるからそういうのは……と言って断ろうとしていたようでした。数分の後、明石さんは遠方に目をやり、手招きして彼氏を呼びました。

 

現れたのは小津でした。

 

私は激しく動揺しました!明石さんに彼氏がいることもショックですが、それよりも、ずっと一緒にリア充爆発しろ!」と浮かれた高校共の中でむなしいシュプレヒコールを上げていた小津が!まさか!よりにもよって彼女と、付き合っていたなんて!何時から付き合っていたのかと罪袋の下に張り付けた笑顔で聞いてみれば、なんと8か月前からだと。八か月間、私はリア充の横で「リア充死ね!」と声を上げていたのか!いかにもな道化だ、覆面まで被って!小津に文句をたれると、「『俺は』一言もリア充爆発しろなんていっていない、君が言っているのを聞いて笑っていただけ」なんて言いやがる。

 

こうして私の二つ目の恋は、友人の裏切り(?)という形で一旦の終末を迎えました。今考えれば、小津も明石さんと付き合っていることを公にしたくはなかっただろうし、私がネタでリア充爆発しろ」なんて言ってても曖昧に笑うしかなかったことは理解できます。別に私と明石さんとの競い合う関係や、理知的で才気溢れる彼女を尊敬する気持ちなどは彼らが付き合っていたとしても変わるものではないし、失恋のショックそれ自体は時が癒してくれます。罪袋を被っている時に友人が好きな人と付き合っているのを知ってしまったというエピソードは、いい笑い話になることでしょう!完!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何も知らず、これで終われば良かったんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

高3の秋!私は小津と共に下校していた。それまでは努めて話題にしないようにしていたが、この日は本当になんとなく、明石さんとどうなったのか聞いてみようという気持ちになった。聞くと、もう数か月前に別れたらしい。ここで突然、数日前に樋口との話の中で話題に上がったあのメールのことを思い出した。あのメールがLINEグループに貼られた日と、小津と明石さんが付き合っていた期間は被っている。小津に二股をしていたのかと問いかけると、彼はこう答えた。

「あのメールの相手は明石さんだよ。」

勿論信じられるはずもない。あまりに彼女のイメージとかけ離れている。小津に再度問いかけると、嘘だよと笑って言ったので安心した。明石さんがあのメールを書く、ということよりは小津がネットで知り合った小4女子とえっちメールしつつ明石さんと付き合っていたという方が一億倍信じられる。

 

話は受験に移る。

高3の一年間は本当に幸せだった。明石さん(や前述の天才)と順位で競い、彼女に数学と理科を教え、英語と国語を教わり、お勧めの参考書を聞き、図書室にあった漢文の神参考書について盛り上がり、模試会場で会い、東進をディスり、進路を話していた。一度だけ放課後の教室に二人だけになったこともあった、無難な話をしていたが私はその晩に死んでもいいと思えるほどには幸せだった。彼女にとっては私は単なるライバルでしかなかったのかもしれないが、それだけでも十分に幸せだった。

 

彼女は最後まで二択の進路を迷っていて、結局は西の大学へ出願していた。進路が分かれることは悲しいが、目指すところが違うので仕方がない。

 

受験が終わり、最後の登校日、卒業式の日になった。私は遂に、彼女からメルアドを聞き出した。

 

合格発表の日。自分の合格を確認した後、彼女からメールが来るのを待っていた。いつまで待っても来ないため、こちらからメールを送った。そして、無事に彼女も合格していたことが分かった。

 

 

これ以降は語るに値するものはない。普通にメール(後にLINE)を送って近況報告しあうくらいで、それぞれがそれぞれの道に進んで行くのだろう。新たな青春の場、薔薇色のキャンパスライフが待ち受けている筈だ。進研ゼミで見るようなあれが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうは問屋が卸さない。私に限っては、恋愛や青春に関するハッピーエンドなど存在するはずがない。

 

明石さんとのメールのやり取りの中で、小津の話になったので例のメールについて聞いてみた。少し経って、彼女からの返信には、「そんなメール知らない、小津はいつも危ないやつだな。」と言った内容で返信が来た。その数日後、樋口から卒業旅行に関するラインが来て、流れで小津や例のメールの話題が浮かんだ。私は小津と弱みを握りあっているような関係になりたくなかったためにあのスクショは消していたが、どうやら樋口はまだ持っているようだった。久々にあの文面を見て笑うかと思い、樋口からスクショを送ってもらった。

 

そのメールをよく読むと、明石さんの下の名前をもじった一人称が使われていた。私は少々恐れつつも、「まあ、よくある名前だしな」と樋口にラインを返した。次の瞬間、樋口はそのスクショのメールアドレス部分を拡大して送ってきた。紛れもない彼女のメールアドレスだった。私は、人生で二度とないほどに酷く面食らった!彼女と競い合った受験という青春のすべて、彼女への憧憬、そういったものがすべて崩れる音がした。ロールモデルが、教祖が、信仰が瓦解したのだ。マリアが激しいセックスをヨセフと行っていた、キリストは神の子ではないと写真で見せられたようだった。

 

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当時のLINE

 

二日間飯を食べれず思い患った末、私はこの苦しみを分かち合うことにした。彼女を勝手に信仰対象にした私が悪いのだと今は思う。だが、それでもやり場のない感情を、青春の残滓を彼女にぶつけざるを得なかったのだ。私は知ってしまったことを(LINEで)話した。それだけ伝えると、互いに空気を読んだのか、黒歴史とか笑い話とかそういうカテゴリにこの話を収めるように会話が進んでいった。

 

その後も一年近く、彼女とは普通にメッセージしあう仲だった。だが私は、この捩じれた青春を残して大学で新しく恋愛をできる気がしなかった。大学二年の五月、彼女が上京するというので一緒に遊び、最後、スカイツリー展望デッキにて告白した。そして、フラれた。

 

これにて私は遂に「高校生活」から卒業し、大学生として新たな歩みを進められるようになったのである。

 

ハッピーエンドはない。

 

 

 

 

 

余談だが、この文章は2019年、大学二年生の12月24日の早朝に書かれている。一週間ほど前、三度目の失恋(告白失敗)を経験した。つい数週間前に付き合いだしたとのことである。

 

かくして私の10代は終わる。行動が遅かったり、執着したり、人の恋人を好きになったりして、結局恋愛勝者にはなれそうにない。イエス=キリストは30歳になり、初めて伝道者として旅に出たという。果たして私の20代はどうなるのだろうか。

 

そろそろ私も救われたい、切実に。

 

 2020/12/24 追記

 

この一年で出会った異性自体が二人ほどでした。いよいよもって詰みの様相を呈しています。

 

 2021年追記

ウォウウォウ イェイイェイ

 

(*1)クリスマス

エス=キリストの生誕を祝う日であり、カップルがいちゃいちゃちゅっちゅするためのものではない。上皇の誕生日より祝われてそうで面白い。

(*2)ベイマックス

ここではディズニー映画に出てくる、空気でふくらんだ白くて丸いからだを持つロボット。

(*3)天理教

茶化すの怖いので自分で調べてください

(*4)デュエマ

日本で大人気のトレーディングカードゲーム。最新弾「超天篇 拡張パック第4弾 超超超天!覚醒ジョギラゴン vs. 零龍卍誕」発売中。

(*5)カゲプロ

ボーカロイド音楽を中心としたマルチメディア作品、カゲロウプロジェクトの略。私が入ったころはニコニコ動画で東方厨とカゲプロ厨が醜い争いをしていた。

(*6)バーチャル活動は後に更に充実する

大学生になった筆者は自作美少女アバターを纏いVR空間で遊ぶようになった。

(*7)TRPG

テーブルトークロールプレイングゲームの略。RPGを髪とペンとダイスと話し合いでアナログに行う。概要を説明するにはここは狭すぎる。

(*8)フタル酸

示性式 C6H4(COOH)2 のベンゼンジカルボン酸。受験有機化学によく出てきて脱水してる。

(*9)シノビリフレ

Nintendo Switch向けのゲーム。戦乱カグラというシリーズの派生。Switch向けにしてはえっち。

(*10)おそ松さん

「おそ松くん」を原案にしたアニメ。女子の間で流行した。私は最初の内は面白く感じたのだが、コンテンツが腐女子のものになっていくのを感じて手を引いた。でも結局面白い。

(*11)ボーカロイド

ヤマハが開発した音声合成ソフト。「初音ミク」など。ODDS&ENDSは神曲

(*12)ジョジョ

荒木飛呂彦作「ジョジョの奇妙な冒険」シリーズ。当時は第三部のアニメをやっていた。

(*13)LINE

SNSアプリ。最近公式アカウントかサークル全体からしか通知がこない。個人チャットを動かすコツを教えてくれ。

(*14)えっち

エッチじゃないよえっちだよ。